政令番号はSDSに記載義務があるのか?〜労働安全衛生法改正を踏まえて〜
2025.09.04
はじめに
化学物質を扱う事業者にとって、特定の危険・有害な物質についてのラベル表示や安全データシート(SDS)の作成・交付は、重要な法的義務です。
2023年以降、対象物質の拡大やGHS分類の見直しが進むなか、事業者からは「SDSに政令番号まで記載しなければならないのか?」という声が多く聞かれます。
今回は、この疑問について整理してみます。
SDSに求められる「適用法令」の記載
労働安全衛生規則(以下「則」)別表第2では、表示・通知対象物質が列挙されており、これらに該当する化学物質はラベル表示とSDS交付が義務付けられています。
SDSの「適用法令」欄には、この対象物質であることを明記する必要がありますが、記載が求められているのは物質名であり、政令番号(号番号)まで書く義務はないとされています。
政令番号が変わる可能性
政令番号は固定的なものではなく、新規物質の追加や制度改正の際に変更される場合があります。
そのため、もしSDSに政令番号を記載していた場合、番号が変更されるとSDS全体を修正しなければならず、事業者に大きな負担が生じる可能性があります。
実際に、行政側も「政令番号まで記載する義務はない」と明確に示しており、番号の変動リスクを避ける観点からも、物質名の記載にとどめるのが適切です。
実務上のポイント
- SDSには物質名を記載すれば十分
→ 政令番号は法的義務ではなく、参考程度に扱うにとどめるのが無難。 - 番号変更のリスクを回避
→ 無理に政令番号を記載すると、改正ごとに修正作業が必要になり、事務負担増に直結。
まとめ
SDSの適用法令欄に政令番号を記載する法的義務はありません。
必要なのは物質名の明記であり、政令番号は法令改正に伴い変動する可能性があるため、実務上は記載しないほうが合理的といえます。
今後もGHS分類や対象物質の見直しは続く見込みです。
SDSの整備にあたっては、「何が義務で、何が任意か」を正しく押さえ、効率的かつ法令遵守を徹底していきましょう。
参考情報
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000231621